ナチュラルな

 なんだか煙が目に染みる。何やら大きな声で叫びちらす自然環境団体が街中で牛さんの肉を焼いているようだ。培養肉を食べるのが常識となった現代に「生き物」を食べようとする人がいるなんてなんとも残酷な話だ………。もちろん旧世代の人類が食べ物に困窮しており動物を食べる為だけに家畜として育てていたというのは知識としてはわかっている。現代だって牛さんや豚さんを食べることが禁止されているわけではない、けど牛さんや豚さんはカワイイペットとして家の中で一緒に過ごす家族であって、普通の人は家族は食べようと思わないだろう。そういうことだ。

 「自然と共に」「本物の肉を食べよう!」「あベ力゛」と書いてあるプラカードを掲げた人たちを横目に目的地へと歩みを進める。赤いネオンライトが輝くレストラン「新新華僑」の入り口。反重ブーツの踵が転送装置にハマると僕の体は再構成されてその店内へと誘われる。

 ネオンライトが装飾された虎の屏風が煌びやかさを主張している一人用の部屋には「いらっしゃいませ」と喋るUXホログラムの小喬ちゃんが表示されている。食べるものはもちろん決まっている新培養肉「ワギュウ」だ。100gで12万ペリカもするのだから決して安いものではない。

 ほどなくするとテーブル上に小喬が再び表示され「料理が出来ました」と喋る。そして転送されてきた熱々の鉄板に乗せられた「ワギュウ」のステーキ。先ほど街中で見た自然環境団体が主張していた「ナチュラル」とは真逆の存在、この肉には現代科学の英知がこの食べ物に集約されているのだ。

 続かない

コメント

タイトルとURLをコピーしました